無銘(彦根)
大江山図鐔


鉄地竪丸形肉彫り地透色絵 金覆輪
縦 76.2mm 横72.5mm 切羽台厚さ 4.2mm 耳厚さ 4.6mm
重量 112g

落し込桐箱


no sign (Hikone)
"O-e yama"
76.2mm×72.5mm×4.2mm (edge 4.6mm)
made of iron, oval shape, openwork, iroe
come in a special Kiri Box

価格 100,000円




 

 今は昔、丹波大江山には鬼がおり、雲に乗って都に飛来して人々を驚かせ、また美しい女性があれば、これを連れ去り、山頂の館に住まわせたという。鬼の名を酒呑童子といい、誘拐された美女は数知らず。池田中納言が手塩にかけて養育した娘もその美貌が童子の目にとまり、連れ去られてしまった。悲嘆する中納言は時の帝に訴えたが、帝にもなすすべは無論なく、途方に暮れた帝は源頼光(注1)を呼び、美女奪回を命じた。

「物の怪を相手に一戦交えよとは…。果たしてどうしたものか」

 渡辺綱、坂田金時、臼井貞光、卜部季武、平井保昌らいずれも一人当千の家臣を呼び寄せた頼光は山伏に変装し、鎧を笈の中に入れて担ぎ、太刀を帯び、金剛棒を手に、険しい山に分け入った。館が見つからず、途方に暮れる頼光一行であったが、神仏の助けもあり、また一味の衣服を洗濯していた花園中納言の娘から童子の館の場所を聞き出し、遂に乗り込んで、童子を酩酊させたうえで、腰に帯びた伯耆守安綱の太刀二尺六寸四分を(注2)を抜き放ち、見事討ち取った。この快挙は頼光の名声を一層高からしめた。

 表題の鐔は堅牢な鉄地に、巧みな鑚使いで山道を行く頼光・金時・綱の主従を彫り描いた作で、江戸時代の浮世絵師も好んで採用した構図(注3)そのもの。光を受けて輝く山の頂は金布目象嵌で描かれている。鬼の棲む大江山は鬱蒼とした木々で覆われ、山裾を行く山伏姿の頼光一行が対照的に小さく、野の中で鍛えられて日焼けした顔は素銅の色絵で表され、頼光を真ん中に三人の勇者の口は厳めしく引き結び、眼光鋭く、不気味な静寂に包まれた山道を黙々と歩んでいる。黒々とした鉄地に施された覆輪の金が映え、ひときわ見栄えのする作品となっている。

注1 頼光は天暦二年から治安元年。源満仲の子。摂津源氏の祖。摂関家に仕えた。

注2 酒呑童子を退治した頼光の太刀がこそ名物童子切安綱である。秀吉、家康、秀忠と伝わり、『享保名物帳』にも記載のある天下五剣の一。

注3 江戸後期の浮世絵師・歌川重宣(二代目歌川広重)に大江山山中を行く源頼光・坂田金時・渡辺綱の三人を描いた作がある。


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『義経とその時代』
大三輪龍彦・関幸彦・福田豊彦編 
発行 山川出版社
定価1,800円(税込)
(別途送料280円)

第三章 伝説と虚構 装剣金具に描かれた源平合戦


本コーナー執筆者小島つとむによるものです。装剣小道具に描かれた平家物語の世界をもっと堪能されたい方に是非お勧め致します。


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