無銘 会津正阿弥 八岐大蛇図鐔

陸奥国會津 江戸時代後期
鉄槌目地障泥形高彫色絵
縦 81.9mm 横 76.7mm
切羽台厚さ 3.7mm 耳厚さ 3mm
落し込桐箱入
価格 12万円






〜スサノオの英雄譚〜

須佐之男命は日本神話の重要な主人公の一人。あまりに強い個性と覇気は高天原の天照大神すらも持て余した程。天界を追われるように去った須佐之男命だが、彼は出雲国の斐伊川上流で八岐大蛇を討ち、土地の神の娘櫛名田比売を娶って出雲の主となるのである。そして大蛇の体から取り出された天叢雲剣は天界の天照大神に献上され、それが三種の神器の一つ草薙剣となったという。
 出雲の大蛇はタタラ技術と良質の剣を象徴しているとみる向きもある。大蛇の体内から取り出された鉄剣が出雲の国主・須佐之男命から天照大神に献上され、これが降臨した天孫の権威の象徴「草薙剣」であるというエピソードは、大和と出雲の王権の在り方、位置づけ、古代国家の成り立ちについての古代人の認識を窺わせて、頗る興味深いものがある。
 表題の鐔はまさにその伝説の場面を描いた作。下半が張った障泥形に造り込まれた鐔面の向かって右手の桟敷には、大蛇の餌食となることを運命づけられた櫛名田比売。これを守らんと剣を抜き放った大丈夫が須佐之男命で、その視線の先には龍に擬せられた八岐大蛇。須佐之男命が用意した甕の酒をすっかり飲み干し、酔いで重たくなった体をしならせて、目当ての比売に迫る大蛇の前に、立ちはだかったのが須佐之男命。殺気に気おされたか、大蛇は上空に舞い上がって雲間に身を潜め、固い鱗を立て、低く唸り声を響かせている。須佐之男命は両足を強く踏ん張り、髪を逆立たせて眼光鋭く、まさに憤怒の表情で剣を手にし、当たりは両者の強い気で充満し、視線はぶつかりあって火花を発さんばかり。所持者は血湧き肉躍る英雄譚の主人公に我が身を重ねたものであろう。上質の鉄地は槌目仕立とされて変化に富み、これに高彫色絵で描かれた登場人物が浮かび上がり、実に見応えのある作品に仕上がっている。
石黒門で陸奥国岩代住の皆川政勝の作に同図の鐔が遺されていることから(参考)、作者は会津正阿弥派の鐔工であろう。

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